故郷を捨てた春
赤トンボ
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1 |
♪
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2 |
枯れ葉 散る 秋の日の昼下がり
街の小さな図書館
ふと見た向こうのテーブルに
セーラー服の人
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3 |
なぜか、見つめあった、短い時間
変な人と 思われたくない
なにもなかったように
本に視線を戻した
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4 |
午後の日の中に 映える姿
見ていたかった かわいいひと
本の文字が 目に入らない
ああ、何があったのか
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5 |
冬の夕暮れ 迫る中 街の小さな本屋
本棚の前に佇んでいた
その時だった その時だった ごめんなさいと
初めて聞いた あの人の声
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6 |
愛しのマリアは横にいた 見つめ合うには近過ぎて
上の棚から本を取り
あの人は去っていった
何がおきたのか 考える間も与えず
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7 |
夕暮れの 町の中の電気店
みせの奥に 聞こえてきた
なぜに あの人の声が
家の灯火の 付け替えをしてと
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8 |
聞こえた会話に 心が騒ぐ
おうちは近く
あの人の名は みいさん
あの人は また目の前に踊る
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9 |
僕は店では アルバイト
あの人の 家に使わされる 事もなく
店から去りゆく あの人の
後ろ姿を見送った
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10 |
粉雪舞う町 スキー姿のあの人
前の週 すきーにいった僕
もしや あの人は なにかを伝えんと
メッセージ を出していた
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11 |
すべては 神の悪戯 か
なれど僕には 素敵な踊り 返せなかった
季節は 過ぎていった
ふたりを結ぶ 何も 創れなかった
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丘の上の男子校の僕たち
女子高生と なにを語るべき
でもでもなにかを 交歓したかった
あのひとは こんな僕に あの人は こんな僕に何をみていたのか
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春が来て 旅立つ日は来た
山の向こうへ
待ち受ける 灰色の 知らない町
ふるさとの 二人の物語 生まれずに消えた
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14 |
十九の春に、故郷を捨てた
ふるさとをすてた
かわいい あの人に
さようならを告げられずに
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15 |
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