誰も救われない
彼
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1 |
♪
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2 |
彼は戦いに行った 春
朝日は彼のもの中いっぱいにひろがっていた
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3 |
蝶々がふんわりふんわりととびかい
あたりには蓮華の甘いとろけるような匂いがたちこめていた
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4 |
遠くには菜の花なのだろうか
地平線いっぱいに黄色い帯が流れ
どこかで牛が啼いたような気がした
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5 |
ふと後ろを振り返ると山なみが霞んでおり
その霞の中から赤い炎が刺すような光を放っていた
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6 |
黒い煙がその赤い炎を覆っており
死臭がそこから漂ってくるのだった
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7 |
彼の渦巻管は先程からある周波数の振動を
繰り返し繰り返しキャッチしていた
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8 |
ちりちりというその音は彼の脳髄を黒い網でおおい
じわじわと押し潰すかのようであった
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9 |
キリキリと骨と骨がまわされ
彼の脳は耳から出てしまうかにみえた
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10 |
あたりには蝶々がふんわりふんわり舞っていた
蓮華は広い台地を一面覆い尽くしていた
一匹の蜂が赤い炎の方へ飛んでいくのが見えた
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11 |
♪
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