778276 / 詩:萩原朔太郎 作曲:ねこにマインド
浜辺 若ければその瞳も悲しげに
ひとりはなれて砂丘を降りてゆく
傾斜をすべるわが足の指に
くづれし砂はしんしんと落ちきたる。
なにゆゑの若さぞや
この身の影に咲きいづる
時無草もうちふるへ
若き日の嘆きは貝殻を
もてすくふよしもなし。
ひるすぎてそらはさあをにすみわたり
海はなみだにしめりたり
しめりたる浪のうちかえす
かの遠き渚に光るは
なにの魚ならむ。
若ければひとり浜辺にうち出でて
音もたてず洋紙を切りてもてあそぶ
このやるせなき日のたはむれに
かもめどり涯なき地平をすぎ行けり。
♪ |
■コメント追記は登録者のみ |