643358 / 竜胆(りんどう)
遥歩き出した
夏の夕暮れ
田圃の畦道
蜻蛉が舞う
涼やかな風が
ご挨拶とばかりに
思案に沈む
旅人を撫でる
大きな楓が
モノクロームに映され
意味を持たずに
出任せを見せる
日々の暮らしに
途方もない
途轍もない
煌めきを求めて
柔らかく
清々しい
螺鈿細工の
銀を求める
別れを選んだ
旅人の思いは
深々として
脳裏に刻まれる
奥底から湧き出る
もう一つの思いは
いつかの夜に
忘れてきた物
薄の草原は
鼈甲色に染められて
手を翳して見ても
覆い隠せない
景色を眺めていた
静かに時は流れて
逆らうことなく
累日累月累年と
♪ |
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