297900 / みつびし
甘え
人はいつか大人になると言うけれど
僕は今でも大人になれた気がしないのです
体ばかりが年を取り
頭の中はずっと子供でした
周りの人はそうではないようで
時と共に大人になっていったのです
僕だけが同じ場所にいて
頭の中はずっと子供でした
そうして体だけが大人になり
そのまま社会に放り出されたのです
そこでは子供はいらないと言われ
そのうち居場所をなくしました
けれどもお金がなければ生きていかれず
僕は必死に大人のふりをしていたのです
子供が何をやっているのだと笑われながらも
必死にそれを続けました
周りの大人は楽しそうでした
それは本当に楽しそうに見えました
ある日全てがどうでもよくなり
僕は社会から去りました
6畳間の部屋に閉じこもり
天井を見ながら歌を聴きました
全てから解放された心持ちで
その旋律に浸りました
何をするでもなく日々は過ぎ
一通の手紙が届きました
中学校の同窓会
懐かしい顔を見に行きたくなりました
かつての仲間たちはすっかり大人になり
それぞれの居場所を見つけていたようでした
仕事を頑張る人、子供を持つ人
幸せそうでした
ああ
私には
なにもなく
人はいつか大人になると言うけれど
僕は今でも大人になれた気がしないのです
体ばかりが年を取り
頭の中はずっと子供でした
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