Ver. 3.25 (Aug 2024-) orpheus2024a |
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データ種別 | サイズ(Bytes) | ファイル名 | ファイル仕様 |
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mp3 音楽ファイル | 4458816 | 330193.mp3 | MPEG ADTS, layer III, v2, 128 kbps, 16 kHz, JntStereo |
MIDI データ(カラオケ用、加工用) | 61722 | 330193.mid | Standard MIDI data (format 1) using 14 tracks at 1/384 |
pdf 楽譜 | 1177217 | 330193.pdf | PDF document, version 1.4, 11 pages |
lilypond 楽譜データ | 60245 | 330193.ly | Unicode text, UTF-8 text, with very long lines (473) |
「生ひ立ち」 NANIWANO
私の上に降る雪は 真綿のやうでありました ♪ ♪ ♪ ♪ 或る少年の声はか細く誰の耳にも届かなったが 活字は誰の目にも見えた インクになった声に目を通した詩人が言った 「君の言葉には力があるね」 はじめて自分の言葉が他人に届いた少年は 唇を万年筆の先に重ねて 思いを青いインクに託した 少年が言葉を紡げば皆が微笑む 当然だと詩人が背中を叩く 微笑む人の心は知らない少年 今日も詩集が印刷所で刷られる ♪ ♪ ♪ 私の上に降る雪は 霙のやうでありました 私の上に降る雪は 霰のやうに散りました ♪ ♪ 或る少年は部屋にこもり詩を書いた 書いて書いて書いて書いて書きつづけた やがて腱鞘炎になった 動かない手に鞭打って少年は詩を書いた 詩人と編集が急かすので少年は口も耳も塞いでしまった やがて言いたいことがわからなくなった少年は 首筋に万年筆の先をあてて 一思いに青い薬品を飲み干した 少年は涙を流して微笑む どうしてだと詩人は悲しみにうなだれる 微笑む少年の心は知らない人々 今日も詩集が印刷所で刷られる ♪ ♪ ♪ 私の上に降る雪は 雹であるかと思はれた 私の上に降る雪は ひどい吹雪とみえました 瞳を閉じて浅い呼吸をする少年 夭折の詩人の詩の走馬灯 浪漫と白昼夢の世界へ行きたいと切に願った 私の上に降る雪は いとしめやかになりました…… ♪ ♪ 少年の命は儚く尽きる 残念だと世間は目を伏せる 微笑む少年の遺影は見ない人々 一層輪転機が忙しく働く 一層輪転機が忙しく働く |