Ver. 3.25 (Aug 2024-) orpheus2024a |
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愛する妻 Eurydice(エウリュディケ、伊:エウリディーチェ、英:ユリディス)が毒蛇に噛まれて死んでしまったのを悲しみ、冥界へと連れ戻しにゆきます。途中で何度も阻まれますが、その度に切々と歌い奏でる音楽に、地獄の番人たちは感動してオルフェウスを通してやり、オルフェウスはついに黄泉の国の王のハディスに会うことができます。死者の黄泉帰りを許さないハディスも、彼の音楽に心を打たれ、ついにエウリュディケを連れて帰ることを許します。
ただし、その条件は、地上に帰るまでは決して妻の方を振り返ってはならない、というものでした。手を引き、足音は聞こえるものの、本当に妻がついて来ているのか、あと一歩のところで不安に駆られたオルフェウスは、ついに振り返ってしまいます。それを最後に、妻の姿は掻き消すように永遠に失われたのでした。これが、有名なオルフェウスの冥界下りの伝説です。日本のイザナギ、イザナミの伝説に似ている点も興味を持たれています。
この自動作曲プロジェクトでは、そのような伝説のオルフェウスを目指して、自動作曲するシステムを開発しました。いまだに研究途上ですが、研究が進んでいつか本物のオルフェウスに近づきたいものです。
オルフェウスとエウリディーチェの物語は、グルックのオペラでも有名です。その中の「精霊の踊り」は、死んで冥界に行ったエウリディーチェを、シャンゼリゼ(エリゼ原:極楽浄土)で精霊たちが迎える場面のフルートの名曲です。(パリ随一の通りが「極楽浄土」とは思いつきませんよね)。オッフェンバックの「天国と地獄」はそのパロディ喜劇です。その中のカンカン・ダンスは(運動会で必ず聞くくらい)有名ですね。さらにアカデミー賞映画「黒いオルフェ」はそれを現代のブラジルに移した話です。
ちなみに、当研究室の自動伴奏システムには Eurydice(ユリディス:英語読み)という名前を付けています。ピアノ奏者がピアノパートを弾くと、オーケストラがぴったりとついて来るシステムで、一人でピアノコンチェルト演奏を楽しめます。しかし、振り返ってはなりません。振り返ったら、架空のオーケストラの姿は消えてしまうのです。
さらにこの話には続きがあります。妻を失ったオルフェウスは女性との愛を断って「オルフェウス教」(輪廻転生、禁欲的な道徳律が特徴)を広めますが、ディオニソス神の怒りを買って、マケドニアで女たちに八つ裂きにされて河に投げ込まれ、首と竪琴がレスボス島に流れ着き、それが天に挙げられて、星座の「こと座」(Lyra)となりました。
オルフェウスの冥界下りで3ッ頭の番犬ケルベロスに阻まれたとき音楽で眠らせましたが、ハリーポッターでも同じ場面がありますね(ハリーポッターはそういう古典知識が詰まっているから深いのです)。また、レスボス島からはレズビアンと言う語も生まれ、今やLBGTQの一つになっていますね。ギリシア神話はあらゆる分野に影響を与えています。
というわけで、クイズの答えは:
【参考リンク】
【画像集】
スウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)のコンサートホール(Konserthuset)の前にあるブロンズ像「オルフェウスの泉」。スウェーデンを代表する彫刻家カール・スミスの作。ニンフらに囲まれて、オルフェウスが竪琴を弾いている。毎年12月10日にこの背後の建物でノーベル賞(平和賞以外)の授賞式が行われる。(館前のヒョートリエット広場(Hötorget)にて、当システム開発者が2017年8月22日に撮影) |