705289 / ひいし
逆しまの月はじめから宙を見上げていた
そこに居場所はないと知って
それでも見上げることを
やめられなかった
水面に映る月影ならばどれ程良かっただろう
空を透く月光なら
その中で輝く埃ならば
どれ程よかっただろう
逆しまの月 張りぼての星
輝きはなく、貴さはなく、美しさはない
抜け落ちた名の残された香り
ただ、それだけが
はじまりからこの場所に在る
進む道だけは示されていた
ただその道が
黒々としていただけで
宙を映す鏡ならどれ程良かっただろう
月光に濡れる枯れ木なら
その枝先から散る葉の一枚なら
どれ程よかっただろう
逆しまの月 歪んだ星の絵
輝きはなく、貴さはなく、美しさはない
抜け落ちた名の残された香り
ただ、それだけが
夜が明ける 朝が訪れる
この体は月と同じように消えてゆく
草の上の朝露の中に
仄かな色を残して
水面に映る月影ならばどれ程良かっただろう
空を透く月光なら
その中で輝く雫なら
どれ程よかっただろう
逆しまの月 張りぼての星
輝きはなく、貴さはなく、美しさはない
抜け落ちた名の残された香り
ただ、それだけが
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