306621 / 泉凛
さむい なにもきこえない おなかすいたあるところに 焚火を信じるひとたちがいた
(天を焦がす炎は あらゆる闇を焼き払う
嗚呼煌々たるその光)
そう云い伝えられて みんなみんな闇夜に葡萄色の火を焚いた
あるところに ギターを信じるひとたちがいた
(安らかに心ふるわすその音色は 鬼や悪魔を遠ざける)
そう云い伝えられて みんなみんな焚火を囲むがごとく
ギタリストの周り 耳を澄ませた
あるところに
海老を信じるひとたちがいた
海老は腰が曲がっているから
(食べると腰が曲がる齢まで長く生きられる)
そう云い伝えられて
みんなみんなギターのピチカートみたく
跳ねる海老を網にいっぱい獲れるだけ獲った
(信じる者は救われるかな)
空気は煤でちょっとくすんだ 森が少しだけちぢまって
海の生き物はちょっぴり減った
(信じる者は救われたいんだ)
さむい なにもきこえない おなかすいた
僕たちは日々火を焚いて ギターを奏で 海老を齧る
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